宿を夕方に出発。昼と打って変わって善光寺の表参道の下りは観光客がまばらだった。西本願寺に差し掛かると左手に、長野電鉄「権堂駅」へ抜ける長いアーケード「権堂商店街」に差し掛かる。
「このアーケード長いな~」
一般的にこの手の商店街は、肉屋、惣菜屋、洋服、呉服屋、雑貨屋、食堂などがメインになるが、不思議に飲み屋が充実している。また左右に走る横丁にも飲み屋がちらほら。
「どこにしようかな」
と連れと悩む。何軒か候補を選択し、権堂駅を通り過ぎると少々寂しくなった。
「この店なんだろう」
「かわら焼きいろりか…ここにしてみるか」
ということで、中に突入するとほぼ満席、賑わっていた。かろうじてカウンター2席が開いていてそこを陣取った。壁には酒のメニュー書きと共に吉田類のオヤジさんの色紙。
「吉田さん来たんですか」
「ええ、5年前ですかね」
と感じのいい40ちょい過ぎのマスター。類のオヤジさんとは昔一緒に『立ち飲み屋』という本を共同執筆した人で、たまにご一緒させてもらったが、とにかく酒が強く鉄の肝臓の持ち主だ。今では酒場放浪の第一人者として、すっかりメジャーになっている。
とりあえずビールで乾杯。
お通しは何かの山菜の和え物。これ美味しい。
長野ということもあり、地の物、山菜が食べたく、ワラビのお浸しを注文。これがいい食感で驚いた。
「家でやるとこんな歯触りにならないんだよな~」
するとご主人が。
「茹でるんじゃなくて、耳かき一杯ほどの重曹を入れ熱湯にくぐらせて、2日弱水に浸しておくとこうなるんですよ」
と懇切丁寧な説明。ことあるごとに話しかけてきてくれて何だか気持ちがいい。
途中「若緑本醸造」を大徳利の燗でいただく。これが実に酒らしい味わいで旨い。
「吉野川に出合った感動があるね~」
どうやら地元の「今井酒造」の物らしい。いい酒だ。
後ろの客が「かわら焼き」を注文。気になっていたのだが、この日のボクはちょい風邪気味でヘビーなものは敬遠していた。この店の名物料理だ。ご主人とアルバイトの女性2人で切り盛りしているが、瓦焼きが始まると客につきっきりになり、オーダーがすべてストップする。瓦焼きの何たるかを懇切丁寧に説明しながら、ご主人自ら瓦に野菜や肉をデコレートする。軽く飲んでお暇するつもりだったけど、ご主人が妙にいい人なのでここに落ち着くことにした。
そして後ろの客に了解を得て、瓦焼きの写真を撮らせてもらった。
コシアブラの肉巻き、これ香りが実にいい。
そしてレンコン焼き、
山菜の天ぷらをつまみにひたすら若緑本醸造の燗をチビチビとやりながら心地よい時間が過ぎていった。この店近くにあったらいいな。
帰りは再び表参道にでて夜の善光寺を見学。
ライトアップされた金剛力士像、本堂は厳かに煌びやかだった。
〈店舗データ〉
【住所】長野県長野市鶴賀西鶴賀町1479 電話026–234–3557
【営業】17時30分~24時
【休日】日
【アクセス】長野鉄道長野線「権堂駅」1番出口から徒歩2分弱