駅周辺の料理屋は、個人経営の店が少なくなった。どこの町に降り立っても同じ看板やメニュー、作り手の魂が感じられないものばかり。それにより、地域の個性は失われ、面白みのない軒並みに様変わりしてしまった。
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巣鴨「プルジャ」正真正銘のネパール料理
浅草橋「ストーン」の焼きカレー
JR総武線「浅草橋駅」周辺は、人形やバッグ、ビーズ、アクセサリーなどの卸問屋が犇めく界隈。その東口から徒歩1分ほどに、焼きカレーを提供する「ストーン」がある。
王子「じゃんご」の美味しいカレーライス
御茶ノ水「ジャズオリンパス」真紅のカレーライス
重厚なJBLのスピーカーからダイナミックな音が響き渡る。ジャズのアナログ盤にこだわった通が集う憩いの空間は、昼はランチ、夜はバーに姿を変える。
まさかこんな洒落た空間に、胃袋を躍動させるカレーがあるなんて想像もしていなかった。開店はおよそ5年前である。
神保町「共栄堂」カレーライスの老舗、スマトラカレー
神田神保町の老舗カレー専門店「共栄堂」のスマトラカレーをご存知か。
共栄堂に出合ったのは学生の頃である。恥ずかしながら僕は文学青年で、神保町の古本屋で初版本や絶版本を漁る日々を過ごしていた。お目当ての本が見つかれば、この界隈の「古瀬戸」、「ミロンガ」、「さぼうる」という喫茶店で過ごしたものだった。ちょいと小銭があれば、神保町名物「いもや」のとんかつか、天丼なのだろうが、僕の場合は決まって「共栄堂」のカレーだった。 家庭のカレーから脱皮し、インドカレーの魅力にはまった頃だったが、ここのカレーはどのジャンルにも属さない味わいのカレーで、茶褐色に佇む色合いのソースは、トロトロで心地よくネットリト舌に絡み付く旨味。その仄かなビターの舌触りは、背伸び盛りの僕にとって大人のカレーを感じさせてくれた。
椎名町「おさむ」行列のとんかつ屋
方々のトンカツを巡ってきたが、これほどコストパフォーマンスの優れた店に出合ったことがない。
西武池袋線「椎名町駅」から目白通り方面へ徒歩8分。静かな住宅街の細い路地裏の一隅に「おさむ」がある。開店前から常に4、5人の行列、店内へ赴けばちょいと居酒屋風情の白熱灯の落ち着いた店内、厨房を囲むようにL字型のカウンター9席、小上がり4人席が2卓ある。
桜台「東嶋屋」極普通のそば屋さん、カツ丼、カレー丼
僕の場合、飲みすぎた次の日はカレーライス、ラーメン、かつ丼ってことが多い。
この日は無性に蕎麦屋のカレー丼とかつ丼が恋しくて、たまたま通りかかった蕎麦屋を見つけて突入した。
立石「洋食工房ヒロ」デコレーションの美しい洋食
この界隈は、呑み助の間では大衆居酒屋の聖地と認識されているけれど、実は洋食の隠れた名店があるのだ。
京成立石駅をイトーヨーカドー側に降り、線路を右手に見ながら脇の道を四ツ木駅方向へ歩く。5つ目の踏切を左折すると左手に「洋食工房ヒロ」があらわれる。7、8分といったところか。
ご主人の飯田裕史は浅草の名店「ヨシカミ」で12年コックとして働き、満を持しておよそ8年前に地元立石でこの店をオープンさせた。ご主人の姉と親戚の叔母と3人で店を切り盛りしている。
御徒町「サカエヤ」 待ち時間0分のカレー屋
JR御徒町駅から春日通りを浅草方向へ進み、昭和通りとの交差点を渡って150メートルほど先の左手角に、大きく「待ち時間0分」とキャッチフレーズが掲げられた「サカエヤ」が現れる。
門前仲町「こうかいぼう」ホスピタリティのいい美味しいラーメン
ご夫婦で切り盛りされる店内へ足を踏み入れると、実に気持ちのいい対応で迎えてくれる門前仲町にある「こうかいぼう」。
店名の由来は「広く皆様に望まれる店になるように」との願いをからだとか、接客にその心があらわれていて、ラーメン屋には珍しく極めてホスピタリティの高い店である。
船堀「ゴヴィンダス」ベジタリアン御用達、南北のインドカレーが楽しめる
葛西「独一処餃子」手作りの旨い餃子
「家族でいつも行ってる餃子屋さんがあってね、すごく美味しいのよ、小野君も行ってみて」
江戸川区葛西にある「独一処餃子」を知ったのは、中学時代の同窓会の席で、昔好きだった彼女からの口コミだった。十数年前のこと。
鶯谷「ビクトリア」住宅街にひっそりと佇む、隠れ家的洋食
JR鶯谷駅北口から、言問通りを越えて尾竹橋通りをちょいと進むと、右手に「根岸小学校」、その角を右折し、15メートルほど行った先に、こぢんまりと佇む下町の洋食屋「ビクトリア」が現れる。
創業は昭和27年。二代目主人大原俊一氏と奥さんで切り盛りする店内は、カウンター4席、テーブル18席ほどで、昼時はいつもサラリマンやOLで満杯だ。
新橋「ザ・カリ」行列必死のカレー専門店
新橋烏森口から徒歩7分。繁華街の喧噪からちょいと離れた立地ながら、カレーマニアに絶大な人気を博す「ザ・カリ」は、近隣のOL、サラリーマン、遠方からの来客で日々賑わっている。店内はコの字型のカウンター10席のみ。昼時は行列必至だ。
茅場町「牛幸本店」限定30食のハンバーグ、12時に完売
茅場町にある「牛幸」は、ある店の取材の帰りに偶然発見した、10年ほど前のことだ。 「なんだこの行列は! 明日もう一度確かめに来るか……」 ということで、翌日の11時頃に訪れた。
浅草橋「水新菜館」人気の中華料理屋
浅草橋界隈は、色々な問屋が点在している。特にビーズ、スワロフスキーなどのデコレーションパーツの専門店が数多く犇めいている。僕の身近にも、財布やスマホなどを装飾するデザイナーの女性がいて、
「自分で素材を加工するのもあるけど、材料の大半は浅草橋で買い付けてくることが多いわね」
と彼女が、買い付けの帰りに立ち寄るのが「水新菜館」で、
「いろいろ食べるけど、やっぱ、あんかけ焼きそばがいいわね」
と教えられ、食べに行ったのが一昔前のことだ。
高島平「ホワイト餃子」独特な形状のおいしい餃子
ホワイト餃子は野田が本店で、暖簾分けした店が方々にある。ここもその一つ。この店はかつて都営三田線の「蓮根駅」近くにあった店で、十数年前にこの高島平の首都高5号線高架の道路沿いに移転してきた。
東池袋「東亭」地元で人気の旨い餃子
「今日は餃子定食が食いたい!」と、そんな衝動にかられるとき、真っ先に頭をよぎるのが、池袋にある「東亭」だ。昼時はサラリーマンやOLでいつも行列の人気ぶり。かれこれこの店に通って20年余りになる。
新高島平「神むら」美味しい背脂ラーメン
浅草「百里香」激ウマカレー
浅草、浅草寺裏手、国際通りの交差点に近い言問い通りに垂直に面した千束通り商店街のはずれに、取材拒否のカレーの名店「百里香」がある。
この店を知ったのは10数年前。近所に「乙姫」という煮込みがめっぽう旨い居酒屋(閉店)が開店前だったので、当たりを徘徊していて偶然見つけた店だった。
神楽坂「インドール」狭小カレー屋
神楽坂、靖国通りに面した狭小のカレー屋「インドール」をご存知か。
随分昔にカレーの食べ歩き(いまもそうだけど)に勤しんでいた頃、この店も当然訪れている。でもここに立ち寄るときは「豚肉の生姜焼き」の記憶ばかりで、肝心のカレーライスの思い出が全くないのだ。飯田橋での打ち合わせの帰りに5数年ぶりに店の前に佇み「なんでだろうと…」と首を傾げながら暖簾をくぐった。とんかつも食べたかったので、
高田馬場「シュエーオー」ミャンマー料理
高田馬場は日本一多くのミャンマー人が暮らす街。そんな彼らが利用するミャンマー料理屋がこの界隈には10軒ほどある。
僕がよく行く店は、駅前から斜めに進む「栄通り」を、10メートルほど進んだ左手のビルの4階にある「シュエーオー」だ。
高田馬場「とん久」美味しいとんかつ
高田馬場には旨いとんかつ屋が3軒ある。ダントツは「とん太」、次に新参の「成蔵」、
そして最後の一軒が「とん久」だ。いずれもラーメン屋を凌ぐ行列店。コスパのいいとんかつチェーン店が2軒あるけど、どうもピンとこない。
早稲田「浅野屋」カレーライス
昨年末、飯田橋の歯医者で治療を終えて、自宅まで歩いて帰ることにした。
神楽坂通りから早稲田通りに入り、弁天町の交差点で「としおか」(高田馬場にあった今は亡き名店、べんてんで12年働いた唯一のお弟子さんの店)に差し掛かったが、すでに30人ほどの行列、あきらめてひたすら闊歩。早稲田通りから穴八幡神社の交差点を右手に折れて、早稲田大学文学部の校舎から大隅通り商店街に入る。かつてこの界隈に僕の事務所があったので、ただ漠然とそこを確かめようと考えていたら、昔よく通っていた「浅野屋」という蕎麦屋が現れた。
dancyu 2016年1月号
12月4日発売の『dancyu』一月号で、記事を書きました。
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『今宵もぷらぷら居酒屋天国』
新刊『今宵もぷらぷら居酒屋天国』(学研刊・税別1500円)が7月10日に配本されます。
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