ご夫婦で切り盛りされる店内へ足を踏み入れると、実に気持ちのいい対応で迎えてくれる門前仲町にある「こうかいぼう」。
店名の由来は「広く皆様に望まれる店になるように」との願いをからだとか、接客にその心があらわれていて、ラーメン屋には珍しく極めてホスピタリティの高い店である。
２００１年１０月のオープンから、味の評判が口コミで広がり、いまではすっかり昼夜問わず行列する人気ぶりである。店主は方々の店を食べ歩き、独学でこのラーメンを作り上げた。豚骨、鶏ガラ、煮干など、その日のスープの状態に合わせて、魚介の乾物の配合を調整するそうだ。目指すラーメンの味わいは、と尋ねると、
「毎日食べられる、飽きないラーメン」が理想なのだそうだ。
そのラーメンを一口すすると若干塩気は控えめだが、ジワジワと深いうまみが口中に広がり、なめらかな中太のストレート麺が喉元を心地よくさせてくれる。いまどき珍しく、板メンマを数日間塩抜きして作り上げたメンマは、ちょいと大きめで歯ごたえの確かな極上の味わい。また肉厚な肩ロースの焼豚もほどよい柔らかさで、どれをとっても隙がない。いつの間にか最後の一滴までスープを飲み干してしまう、そんな底力が潜んでいる美味しさだ。シンプルな見た目ながら深みのある味わいがクセになる。いつも行列なので留意してもらいたい。
気持ちのいい接客もさることながら、美味しいものをこしらえたいという主人の真摯な執念が、客を足しげく通わせているのだろう。