昔、茅場町界隈に、投資・不動産関係のビジネス書を専門に扱う「千代田書店」という本屋が何店舗あり、サラリーマン時代の取引先だった。その頃よく利用していたのが「桃乳舎」という古い大衆洋食屋だった。
この店、明治22年創業とは恐れ入る。建物は昭和初期のもので、戦中の爆撃を逃れて焼け残ったのだろう。この店は「ミルクホール」で、明治の初めごろから始まった飲食店の形態だ。主に牛乳を購入する客に限り、無料で新聞などの閲覧をさせていた店のこと。後にコーヒー、ケーキ、洋食などを扱う店に変化したもので、現存している主な店は、ここと、神田「栄屋ミルクホール」、江東区住吉の「ミルクホール若葉」などだ。
昼時はサラリーマンでにぎわう店で、お勧めはポークソテー、ハンバーグ、スコッチエッグなど、どれも5、600円前後と破格で、一番高いもので「エビフライライス」700円。ランチに至っては500円と頭が下がるね。ちょっと前に全メニューが20円ばかり値上がりしてもこの値段。
久しぶりに訪れて、今まで食べたことのなかった「カツカレー」550円を注文した。
玉ねぎたっぷり、ほどよい辛味と甘味、極々普通の味わいで、子供の頃に「ああ、こんなカレー昔食べたな…」という印象。店の雰囲気と相まって懐かしさがこみ上げてくる感じ。やはりこの店は他の洋食メニューがいいね。いずれにしてもこの値段はありがたい。