この店を知ったのは、築地にある大手食品メーカーのマーケティング部のK氏からだった。
「ドイツ料理の居酒屋なんですが、ここに美味しいカレーがあるんですよ。ぜひ食べてみてください」
とのことだったけど、随分と時間が流れてしまった。何ヶ月か経って、やっと訪れることができた。
地下に降りるとすでに満席、店内は4人席5卓と2人席3卓。しばらく待って2人席に通された。何を頼んでいいのか見当がつかず、とりあえずメニューの筆頭を飾っている「チキンカレー」を注文。
「どれお付けしますか?」
「えっ」
メニューをよく見ると、目玉焼き、ライス大盛り、ハラペーニョ、ザワークラウト、本日のデザート、本日のジュースの6品からサービスで一つをチョイスできるようだ。
「目玉焼きでお願いします」
で登場したのがご覧のカレーライス。回りの客の誰もが、ソースポットからカレーソースをすべてライスの上にかけていたので、僕もそうしてみた。そして一口。
「旨いね~」
褐色のソースは滑らかな粘性で口当たりがいい、苦み走った味わいで、少々の甘味が加わりコクも深い。このカレーソースはどこか、神保町の「キッチン南海」、「共栄堂」、「仙臺」に近いものがある。それと全国のバーなど約130店舗にカレーを提供している「淡路島カレー」の味にも似ている。
再びメニューを眺めると「ドイツビールカレー」と書かれているのを見て合点がいった。「淡路島カレー」のトッピングにスタウトビールで煮込んだポークがあり、それを連想したのだ。ようはこのビター感はビールの仕業、てっきり焙煎玉ねぎやブラウンルー、カラメルの仕業だと思っていた。でもブラウンルーやカラメルも、ちょっと使われているんじゃないだろうか。
またご飯の目玉焼きの下にはマッシュポテトが隠れていて、これもいいし柔らかな鶏肉もゴロゴロ、非常にボリュームがあって満腹。食後にドリンクもついて890円はお手頃価格だ。
後日、食品メーカーのK氏に
「カレー食べましたよ、美味しかった」
と話すと、
「いいでしょう、キーマカレー」
ありゃ? 彼が勧めていたのは激辛のキーマカレーのようなのだ。
いずれにしろ夜も含めて再訪するつもりだ。