新井薬師にあった憩いの寿司屋「ねぶた寿司」がなくなってしばらく経つ。ここに代わる寿司屋を探していたけどなかなか見つからなかった。その条件としては、安くてほどほどに旨い、そして居心地の良さだ。5、6店舗候補があり訪れたがどれもその条件に合わなかった。そして沼袋を徘徊していて見つけた「中むら」。
恐る恐る扉を開ける。
「いらっしゃい」
気のいい70半ばの大将。給仕は客の女性が手伝っていた。L字のカウンターは7席。2人テーブルが2卓。ご隠居とオバサマで埋め尽くされ、賑わっていた。
「瓶ビールお願いします」
しかしここは年齢層が高い。70~80代が勢ぞろい。ご隠居たちの憩いの寿司屋だ。
大将が一所懸命に岩ガキをさばいていた。
「岩ガキは何個からですか?」
「2個で600円」
安い! どうやら客が持ち込んだものらしく、その人の分以外は客に提供するようだ。持ち込みだから安いのかな。
「じゃ刺し盛りと岩ガキお願いします」
お通しはホタテ刺し。いいね。燗酒に切り替える。
そして岩ガキ。旨味がビシっとしてミルキーで美味しい。
刺し盛りはマグロ、カツオ、タイ、タコどれも文句なし。
「仕事頑張るね」
と客が大将に酒を注ぐ。その酒を煽りながら、
「1人じゃボケちゃうから仕事に励まないとね」
どうやら女房に先立たれた様子だった。
この時期シンコ(小肌の子供)は珍しいので、イカと一緒に握ってもらった。
これが旨い。
「焼き物は何がありますか?」
「鮭とニシンとブリカマかな」
「じゃブリカマで」
大将は焼き物の仕込みを終えるとカウンターに腰かけ、スイッチが切れたように酒を飲みながらうなだれる。しかし注文が入るとビシっと気合が入る。面白いな~。
客が入れ替わるが相変わらずご隠居ばかり。
ブリカマ、ホヤをつまみに楽しい時間を過ごす。仕事の確かないい寿司屋だ。お会計も理想通りで文句なし。ここは通わなきゃ。
帰りオープンエアの飲み屋にちょいと酔って、一杯だけ飲んで帰路に就いた。
〈店舗データ〉
【住所】東京都中野区沼袋1-45-2 電話03-3388-1583
【営業】17時~23時
【休日】不定休
【アクセス】西武新宿線「沼袋駅」北口から徒歩3分