「インドールって覚えてるかな」
「ああ、あったなそんなカレー屋さん、いまどうしてるんだろう」
「あると思うよ」
小田急線沿線は学生の頃過ごしていた。下北沢、経堂、向ヶ丘遊園、新百合ケ丘、相模大野、町田、本厚木、江ノ島線の六会辺りを行ったり来たり。
そんな頃、飲み仲間に明治と専修大学の学生の友人がいた。ちょっと前に10数年ぶりに彼らと再会、昔話に花が咲いた。
専大の友人Tのアパートが向ヶ丘遊園駅にあって、寝泊まりさせてもらっていた頃「インドール」でよく昼飯を食べていたのだ。美味しかったのは覚えているが、どんな味だったか? 記憶の片隅に追いやられていた。
向ヶ丘遊園は30数年ぶり、懐かしくてあたりをプラプラ。Tが住んでいたアパートを探すが見当たらない。専大へつづく坂道、通称「心臓破りの坂」があって、バス賃がもったいなくて、この坂を登ったものだった。ヒマなときは彼らの授業を聴講したこともあった。
南口から、「ミスタードーナッツ」横の細い脇道からのアプローチが一番近い。「インドール」の店内へ。「こんな感じだったかな…」オバさんが2人、厨房の人は見覚えがあるけど、ずいぶん年を取った、そりゃそうだ30数年前のことだからね。楕円の変形のカウンターは14席。
メニューは「インドールカレー」680円、「キーマカレー」780円。ここに玉子やチキンボール、唐揚げ、ハンバーグのトッピングでバレエーションを演出。
「チキンボールカレー」880円の辛さ10倍+「茹で玉子」50円追加。
サラサラなカレーを一口、
「美味しい」
最小限のスパイスと玉ねぎで仕上げた風情。カレー粉+スパイスを添加しているか、パウダースパイスだけで仕上げているかは不明だけど、塩加減含めて穏やかにして激旨だ。極めて洗練されている味わいにちょっとウルっと来てしまった。
「こんなに美味しかったんだ…」
辛さは後からジワジワくるものじゃなく、ダイレクトにスパっと飛び込んでくる辛さ、かつてあった「夢民」に例えるなら、7番ほどの辛さだろう。
チキンボールはチェーン店の焼き鳥屋のツクネをホウフツ。どこかチープな味わいだけど、このカレーにピッタリ。茹で玉子は半熟でネットリした舌触り、このサラサラカレーにマッチしている。
※旨味のベースは豚肉だね。
「このお店何年ぐらいになるんですか」
「そうねー、40年かな」
そうか、ボクたちが来ていた頃はまだ開店して間もない頃だったのだろう。しかしカレーの食べ歩きを長いことしているけど、なぜこの店を思い出すことが出来なかったのか、不思議。
余計な小細工がされていないシンプルな味わい、このカレーはありそうで、そう滅多に出会えない味わいだね。
満腹の腹を抱え駅に向かう途中、鶴川駅の鶴川団地界隈にあった喫茶店「エイソン」の褐色のカレーが頭をよぎった。あれも美味しかったんだよね。どこかで復活してないかな。
〈店舗データ〉
【住所】神奈川県川崎市多摩区登戸2066司ビル1階 電話044–900–3994
【営業】11時30分~22時
【休日】火
【アクセス】小田急線「向ヶ丘遊園駅」南口から徒歩2分