中野駅南口、「中野郵便局」へ繋がる裏通りの左手3階に「アチャラ・ナータ」がある。
昔々、この店の3階に「マッチボックス」という洋風居酒屋があった。ご主人は元GSで活躍したプロのミュージシャンで、客の歌にあわせてご主人自ら伴奏してくれた。客層は近隣のOLが大半、主人は彼女たちの会社や恋愛の悩みに親身に耳を傾ける人だった。料理も抜群に美味しくて、またそのデコレーションはビックリするほど美しかった。
と、そんな記憶をたどりながら、3階の扉を開くと、店内は昔の「マッチボックス」のレイアウトと一緒、居抜きなのだろう。ご主人はスキンヘッドで、どこかラーメン屋の店主を思わせる風貌の強面(こわもて)。
「いらっしゃいませ」
とメニュー片手に、
「えー、本日のランチはマイルドなチキンと辛口のポークカレーからどれかお選びいただけます。これに豆カレーが付きます」
と強面の風体とは真逆、実に丁寧な説明。
「じゃポークいただけますか」
「かしこまりました」
登場したのがご覧のもの。左手前が褐色のボークカレー、ジャスミンライスを挟んで、奥が豆カレーだ。付け合せは奥のパパダム(豆せんべい)、その下にサツマ芋のピリ辛炒め、手前キノコのデビル炒め、ジャスミンライスの上に乗っているのが、ボルサンボル(スリランカの鰹節を使ったふりかけ)だ。
「最初はそれぞれのカレーを食べてから、このパパダムを崩して、全部混ぜてお召し上がりください」
とのこと。まずはポークを一口。ブラックペッパーの刺激的な辛味、どのスパイスも突出しないバランス加減、豚肉(バラ肉だと思う)は柔らか、日本人が愛して止まない旨味のあるカレーソース、美味しいよ。そして淡白になりがちな豆カレーだが、これもほどよい旨味があり、ご飯が進む。いよいよすべてのカレーとグチャグチャに割ったパパダム、ボルサンボルと一緒に混ぜて一口、う~んこれも美味しいね。やっぱスリランカカレーは日本人の舌に実にしっくりくる。
モルジブフィッシュ、つまり鰹節でダシを入れているからだろうね。客層はおしゃれカフェに集う女子たちばかり、ヒゲを生やしたオッサンの僕とスキンヘッドのご主人だけが違和感あり。開店して3年ほどだそうだ、この「アチャラ・ナータ」のスリランカカレー抜群ですよ。