意識して古い店を探しているわけじゃない。ただ、燻し銀の佇まいの食堂や中華屋を見かけると、入店せずにはいられない衝動に駆られてしまうのだ。
この店は何の気なしにクルマで横丁を走っている時に見かけた。
「あれ、こんなところに中華屋があったんだ」
店内はL字のカウンター5席に4人テーブルが1卓のスペース。
壁には朽ち果てたメニュー、所々が破れていて極めて見づらい。細面の60半ばのご主人とその母親と思しき2人で切り盛り。
この日は暑かったので冷やし中華をオーダーした。
左隣には酎ハイを飲みながら餃子、レバニラを食べる若者。右隣には年配のオヤジさんが競馬新聞を眺めながら店主と談笑。いい雰囲気だ。
冷やし中華は酸味の抑えられた醤油ダレで実に食べやすく、ほっとする美味しさだ。
「すいません、この店の名前ってなんですか」
と隣のお兄さんに質問すると。
「ですよね、どこには書いてないからわからないですよね。ここハクリュウって言うんですよ」
「ハクは博士の博ね」
と競馬新聞のオヤジさん。なんだか和気あいあい。夜は飲んでいる人が多いようだ。
後日再訪し「ワンタン麺」と「餃子」をオーダーした。開店と同時に入ったので客はボク1人だった。餃子、ワンタンとも餡を包み始める。
ワンタン麺はたっぷりのスープ、もう少し少なくていいかな。軽やかながら奥深い旨味、キレのある醤油がいい。
ストレートの細麺はほどよく滑らかで旨いね。
餃子はカリッとシットリ、肉汁が僅かに滴り、下味が適度に入っていたこれも美味しい。
食後にアイスコーヒーのサービス、志村三丁目の「栄楽」や要町の「可祢井そば」と同様だね。
今度はタンメン、レバニラかな。夜飲みに来なくちゃ。
〈店舗データ〉
【住所】東京都板橋区弥生町47–8
【営業】11時30分〜14時30分 17時30分〜20時30分
【休日】日
【アクセス】東武東上線「中板橋駅」南口から徒歩4分