居酒屋の名店として名を馳せていた「真菜板」が2018年10月に閉店した。何回かお邪魔したことがあり、その閉店の日にボクはたまたま通りかかり、片付けている様子をしばらく眺めていた。斜向かいにある「伊なみ」という居酒屋のママが、
「なんか奥さんが倒れたみたいで、2人ともご高齢でしょう。それでやめたみたい」
という話を聞いた。
年が明けしばらくすると、中央アジア系の彫りの深い顔立ちの人たちが、閉店した「真菜板」の前に集まっていた。
「なんだろう?」
と思っていたらウズベキスタン&キルギス料理を提供する店として2月下旬にオープした。
店内の作りはほぼ居抜き。カウンター8席ほど。ウズベクの民族帽を被りたどたどしい日本語で、
「お水どうぞ」
と接客が極めて丁寧。
「お勧めはなんですか」
「プロフいま炊き上がったばかりです」
「じゃ、それとサムサ一つ下さい」
「プロフ」900円は、イランのポロウ、トルコのピラウ、インドのプラオ、バングラディシュのテハリに似た炊き込みご飯。
ニンジンがたっぷり、マトンに玉ねぎ、干し葡萄など。スパイス感はさほどなく、塩気のほどよい優しい味付けだ。
サムサは一時発酵? させたパン生地でマトンと玉ねぎをくるんで焼いたもの。これ熱々で美味しいね。添えられている濃い目のチリソースにつけて食べるとメチャ旨い。
北インドにサモサがあるけど、恐らくこのサムサがプロトタイプだと思う。中央アジアの豪族が北インドでムガール帝国を建国した頃に流入したんじゃないかな。元々インドのヒンドゥスタンは菜食の人が多く、ムガール建国の頃、肉食の中央アジア、ペルシャ料理が合体して北インドの各種料理が確立したからね。だから北インドのサモサは南インドのマサラドーサ同様に肉ではなくジャガイモになっているんだと思う。
日を改めて再訪。この日は「ラグモン」950円と「スルタマ」1000円、キーマシャシリク1本300円(テイクアウト2本を追加)をオーダーした。
厨房でいきなり麺を伸ばし始めてビックリ。まるで浅草、日暮里の「馬賊」のラーメンの様だ。
ラグモンはカブ、インゲンなど野菜たっぷりのやさしいスパイススープといった感じで、麺はうどんに極めて近い食感。
卓上のビリ辛のチリソースを入れると味がグッと引き立った。
スルタマは半分にカットされたノン(ウズベクのパン)がセット。これマトンの煮込み料理で、ほどよいスパイス感で塩気もジャストで実に美味しい。
ノンにのせて食べたり、これも卓上のチリソースと合わせるとさらに美味しい。
キーマシャシリクはマトンのひき肉をこねて金串に差して焼いたもの。
インドのシークケバブに似ているが、スパイスは控えめ、これも美味しい。これをおかずにプロフと一緒に食べたら楽しいと思う。
〈店舗データ〉
【住所】東京都新宿区高田馬場3–33–3 電話070–5544–8811
【営業】11時30分~15時 17時~21時
【休日】無休
【アクセス】JR山手線・地下鉄東西線・西武新宿線「高田馬場駅」早稲田口から徒歩9分