ブラン亭を探すべく8丁目の横丁を徘徊。大きなビルとビルの間に一間ほどの細いビル。
「ここか!」
スナックやラウンジの入った雑居ビル。奥の階段を上がると扉が開けっぱなしだったので中を覗くとお姉さんが一人。
「11時半からなんですよ」
「そうですか、やっと見つけましたよ」
「そうなの、じゃ入って待ってて」
と通されると、前の店よりかなり広いスペース。
「広くなったでしょう、これバブル時代の造りだからハデハデなの」
相変わらず気さくなお姉さん。
「ここだけじゃなくて、4階にパーティースペースがあって見てみる?」
「ぜひ」
と4階は怪しげながらモダンな作り。
「この間、ここに60人入ったのよ」
「60人! よく入りましたね」
「屋上もあるのよ」
で屋上へ。
「ここでコリアンダーとかの香草を栽培するのよ」
そして3階へ戻る。
「尾崎士郎って知ってるかな」
「ええ『人生劇場』の作者ですよね」
「よかった~、いまの若い人まったく知らないのよ。それでこのビルね尾崎士郎さんと深い関係があって、ビル名が瓢山(ひさごやま)でしょう」
「ああ、なるほど『人生劇場』の主人公が青成瓢吉(うらなりひょうきち)だから、その瓢(ひょうたん)を取ってこのビル名なんですね」
「そうそう、そうなのよ、その逸話が気に入っちゃって」
メニューは前と変わらず、チキン、ポーク、キーマ、野菜、豆、新たに加わったのはラムカレーだ。このカレーを2種類組み合わせる。
「じゃポークとラムに玉子焼き、それとチャイお願いします」
テーブルには福神漬け、ラッキョウ、フライドオニオン、チリチヤトニ、レモンチヤトニが並ぶ。
ポークは前と変わらず、サラサラでやや辛口、スパイスの加減が抜群だ。
ラムはややポークの味わいに似ているが、これも美味。
「相変わらず美味しいですね」
「しばらく休んでたから、ちょっと感覚が鈍っちゃって。やっと前のように作れるようになったかな」
営業は11時30分から通しで夜の22時までとなったようだ。
「お客さん全然入らなくて」
「みんなここに移転したの知らないんですよ」
「そうかな」
このビルの営業はなんと今年いっぱい。
「取り壊すのよ、また探さなくちゃ」
いずれにしても復活してくれてありがたい。今度、夜飲みに来ようかな。
〈店舗データ〉
【住所】東京都中央区銀座8–8–19瓢山会館3階 電話03-3571–0972
【営業】11時30分~22時
【休日】日・不定休
【アクセス】地下鉄各線「銀座駅」A1出口から徒歩4分 地下鉄銀座線「新橋駅」3番で口から徒歩5分