高田馬場「羅偉伝」思い出の味噌ラーメン


 

DSC0557519歳の頃、初めて真冬の札幌を訪れた。バックパッカーとしてのデビューである。「大通公園」でまどろんでいると、メガネをかけた4、50歳のオヤジが話しかけてきた。

「兄ちゃん腹減っでねーか?」

「あっ、はい」

「だったら俺がおごってやっから、ジンギスカンでも食いに行くべ」

オヤジの勢いに飲まれるように、「札幌ビール園」にふらふらとついて行ってしまった。

「飲め飲め、食え食え」

未成年だったが、ビールをジャカスカ、ジンギスカンを貪り、もうお腹一杯。

「ちょっと、トイレ行っでくるから」

と言って、オヤジはそのままトンズラ。

「騙された!」

当然、支払いは全部こっち持ち、参った。その後、斜里の民宿で「ビール園」の話をすると、

「そのオヤジ、メガネかけてなかった?」

「オレもやられたよ」

バックパッカー初心者の何人かが、札幌でオヤジの洗礼を受けていたのには驚いてしまった。その後、オホーツクの流氷の海に落っこちて、死にそうになり。稚内で、周遊券と財布を盗まれた。ヒッチハイクでやっとの思いで、札幌の「大通公園」に再び舞い戻る。持ち金は30円、寝袋にくるまってベンチに横たわっているしかなかった。もうほとんど餓死寸前。

「兄ちゃん、大丈夫か? 腹減っでねーか?」

と突然声をかけてくる4、50歳ぐらいのオヤジ。

「旨いもん食わしてやっから、ついてきな」

またか…。もういいや、どうせオヤジに食い逃げされても金持ってないし、どうにでもなれ! 腹をくくってオヤジのクルマに乗せられて行ったのが、中の島の「純連(すみれ)」だった。

「この味噌なまら旨いぞ、食え食え」

熱々で濃厚な味噌スープ、濃い口の味に負けない力強い縮れ麺、また塩辛さがたまらない、とにかく胃袋に染みわたり、冷え切っていた体が芯から温まった。

「旨いっスね~」

「たべ。もう一杯お代わりしな」

言われるままに2杯目もあっという間に平らげてしまった。

そのオヤジ、しっかりおごってくれて、東京までの電車賃を貸してくれた。助かった。

現在関東で「純連系」が食べられるのは、「新横浜ラーメン博物館」の「すみれ」と船堀の「大島」、渋谷「真武咲弥」、早稲田「真武咲弥」。そして高田馬場「羅偉伝」(旧名さっぽろ純連)だ。2014年6月に「純連」が撤退し、後に従業員が引き継いで「羅偉伝」と店名を改めた。

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ご覧のものが思い出の味噌ラーメン800円。表面はラードで覆われ熱々、ニンニクと山椒の風味がどこか香ばしさを醸し出す。力強い縮れ麺、実に旨いね~。でも塩辛さは本店より抑えられていて、また焼き豚は本来大き目なサイコロ状なんだけど、ここはちょっと薄切り。

昔ほどの感動はないけど、この味噌ラーメンを食うたびに、あの時の餓死寸前だった「大通公園」を思い出す。

〈店舗データ〉

【住所】東京都新宿区高田馬場3-12-8 電話03-5338-8533

【営業】11時~22時30分

【休日】無休

【アクセス】JR・地下鉄東西線「高田馬場駅」徒歩5分


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