友人が雑司が谷にある靴屋で、セミオーダーの革靴を発注するのに付き合った。
「セミオーダーなんてお前ずいぶん金持ってるな」
「足が痛くてどうにも我慢できなくてさ、仕方ないんだよ」
その足で、鬼子母神、雑司が谷をプラプラ。
「なんだこの店!」
オープンエアーのカウンター8席のみ、かつては八百屋だったのかそんな店構え。メニューを見るとどうやらラーメン屋のようだ。
「入ってみるか?」
「だな、面白そうだし」
メニューは「素ラーメン」とそのトッピングメニューにご飯もの。
店主はどこか修行僧のような青年。カウンターでなにか下処理している。よく見ると大量の煮干の頭とハラワタを取り分けている。
「ボクはラーメンに焼豚、煮玉子、海苔お願いします」
友人は出がけにちょい腹ごしらえをしてきたらしく、冷やし半ラーメンに蒸し鶏と空芯菜をオーダーした。
最初に登場したのはトッピング各種。
そして素ラーメンの登場。
スープを一口すすると、深い旨味と乾物の風味。
「美味しいな~」
友人の冷やしラーメンを味見、これも爽やかで実に美味、どこか冷麺にも似ている。
そして具材を乗せて再びいただく。
「これ動物ガラ使ってるんですか」
「いえ、煮干とサバ節、その他いろいろです」
「乾物だけでこの味出すってことは、相当な量を使ってますね」
「そうなんですよ」
「コストかか待ってますね」
「ええ」
客席だけにクーラーがついていて、厨房にはなく、この夏は地獄のような暑さで気が遠くなるほどとか。だから客席のカウンター内で煮干を下処理しながら涼んでいるそうなのだ。今年の3月オープンとか。
「ラーメン屋なんですけど、いまはほぼ飲み屋状態ですね」
卓上の醤油は天日塩でこしらえた加熱処理をしていないもの。食材や素材にこだわっているようだ。いずれにしても穏やかに美味しいラーメン。夜飲みに来たら楽しそうだ。
〈店舗データ〉
【住所】東京都豊島区雑司が谷2–21–6 03–6914–2836
【営業】11時30分~14時30分 17時~21時
【休日】不定休
【アクセス】都電荒川線「鬼子母神前駅」から徒歩6分 地下鉄副都心線「雑司が谷駅」1番出口から徒歩6分