「小野ちゃん、たまには青山で打ち合わせしない?」
デザイン事務所の社長からの連絡だった。
指定されたのは骨董通り沿い「ニッカウヰスキー本社」の斜向かいの2階だった。
「ぼこいって、室蘭の母恋のことかな?」
母恋と店名のつく店はボクが知っている限りでは、西川口のスナック母恋、高円寺の居酒屋母恋、下北沢のスナック母恋だ。そんな疑問を抱きながら2階へ上がるとすでに社長が生ビールを飲んでいた。
生ビールを追加した。
「ぼこいって室蘭の母恋ですか?」
「よくご存知で。直接は関係ないんですけど、そこの地名を借りてるんですよ」
とのことだったが、釈然としなかった。店内は右手にカウンター8席ほど。テーブル席が12席ほどで、小ぢんまりとしている。メニューは和食中心で、青山界隈にしては良心的な価格設定だ。
「最近この店ばっかりでさ、食べ物も美味しいし、落ち着くんだよね」
社長の舌は確かなので、彼のお好みのものを注文してもらった。
「きぬかつぎ」いい茹で加減。
「ポテサラ」旨味、塩気、仄かな酸味がたまらない。
「刺し盛り」は、中トロ、大トロ、鯛、ヒラメの昆布〆、タコなど。どれも鮮度抜群。
「いや~ここ美味しいね」
「でしょう。小野ちゃん気に入ってくれると思ったよ」
遅れてウェッブデザイナー浜ちゃんの登場となる。
「ご無沙汰です」
ここで数馬酒造の「純米竹葉」の熱燗に切り替える。
しばらく仕事の打ち合わせ。
次に注文したのは「たらの芽の天ぷら」はサクッと春の味わい。
「穴子の天ぷら」は珍しく小さくカットされていて実に食べやすい。
「この焼酎見たことないんだけど」
と棚にずら~っとボトルキープされた「一番礼」という銘柄の焼酎。
「あっ、気がついた。俺もこの店に来るまでぜんぜん知らなかったんだけど、これアサヒの焼酎らしいのよ」
「アサヒで焼酎作ってるんだ」
「ほら向かいにアサヒグループのニッカウヰスキーあるじゃん、そのせいだと思うよ」
ということで「麦焼酎一番礼」をオーダーした。
続いて「自家製がんも」具だくさんでホクホク、出汁も旨い。
「ブリのカマ焼き」は塩梅良く脂の乗りもいい。
そして「キンキの煮付け」これメチャ旨。煮付けのタレが抜群で、仄かな甘味とほどよい塩加減は申し分なし。
「ここ全部美味しいな~」
「良かったよ。このキンキの煮付け取っておいてもらったんだよ」
したたかに酔っ払いお腹も満腹。社長、ごちそうさまでした。こんどこの店個人的に使わせてもらいます。
〈店舗データ〉
【住所】東京都港区南青山5–13–2池田ビル2階 電話03–3407–2031
【営業】18時~24時 土18時~23時
【休日】日・祝
【アクセス】地下鉄銀座線・半蔵門線「表参道駅」B1出口から徒歩5分