コの字型のカウンターのある居酒屋は風情がある。わかりやすく言うと、錦糸町「三四郎」、月島「岸田屋」、北千住「大はし」、亀有「江戸っ子」などかな。そんな造作の店を求めて旅に出た。
たどり着いたのが船橋にある「増やま本店」。ここは未開の酒場だった。
暖簾をくぐると満席。
「少々お待ちください」
求めていたコの字型のカウンター、それを囲むようにテーブル席が設けられ、60人ほどの客が犇めいている。実に賑やかで華がある。
「こちらどうぞ」
通されたのが5人テーブル、男3人客と相席になる。カウンター席が2つ空いていたので、
「すいません、その席は無理ですかね」
「ここは1人でこられたお客さんのためなんですよ」
「そうですか、わかりました」
納得した。実に感じのいい従業員だな。
まずは呑み助がこよなく愛するサッポロ赤星でカンパイ。
壁に貼られたメニューを眺めて吟味する。どれも2~300円台と恐ろしく廉価。なんとイワシフライか150円とは驚きだ。
まずは煮込み。色々とつまみたいので、このぐらいの量がちょうどいい。これ嫌味な甘さがなく、最近食べた中でもダントツ、実に美味しい。
ハコダは漬け具合がドンピシャで、出来合いのモノだろうが下手な寿司屋より旨い。
途中日本酒の熱燗2号に切り替える。これ1合で250円とはありがたい。
紅生姜のかき揚げはカリカリで箸では崩せないので直にかぶりつく、塩気と酸味が心地よくこれもいい。
しかしホントに賑やかだ。相席だけどまったく苦にならない、いやむしろ心地よい。次から次へと客が押し寄せる。客は1人ものからカップル、女性客もけっこう多い。この店、歴史は浅いものの、都心の繁華街にある古感を装った酒場とは違い、大衆酒場らしい煮〆った風情など、紛い物ではない地に足の着いた居心地感にホロリと来てしまった。また、なにより従業員のホスピリティの高さに感心する。
そして肉豆腐、これバラ肉が1枚乗せてあり、肉豆腐としての存在意義をしっかりと表現、仄かな甘さと醤油ダレが浸み込んだプルプルの食感が酒を進めてくれる。
アジフライはありがちな生臭さもなく、サクサクでほどよくホクホクだ。
ポテサラも実に美味しい。
さつま揚げは出来合いのモノだろう。これは甘すぎて正直いただけない。格安のメニューながらどれも手抜きがない、手作りモノは文句なしの美味しさだ。
しかしこんな店があったとは驚き。最近出合った店で、ダントツに風情のいい酒場と言っても過言じゃない。
お会計はこれだけた飲み食いして2人で4400円、素晴らしすぎる。
帰りに辺りを徘徊。「一平」も「鳥一」もよさそうな酒場だった。ちょい遠いけどまた訪れるかな。
〈店舗データ〉
【住所】千葉県船橋本町5-6-12 北口斉藤ビル 電話047-423-7855
【営業】14時~23時 日・祝14時~21時30分
【休日】不定休
【アクセス】JR総武線「船橋駅」北口から徒歩1分 京成本線「京成船橋駅」東口から徒歩2分