秩父「富士屋」思い出の手打ちラーメン


この「富士屋」を知ったのは20数年ほど前のことだった。

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「街一番の美味しいラーメンがあるんだ、食べてみたいでしょう?」

秩父夜祭の夜のことだった。秩父神社の表参道、馬場通りで、武甲山に打ち上がる花火を背景に、極彩色の笠鉾や屋台をカメラで撮影しているある女性と知り合った。

「竹で打った自家製平打ち麺、これが最高。年に一度の楽しみなの」

人々の熱気に彩られた夜祭と「富士屋」のラーメンを食べることが、彼女にとって最も心が癒される一日なのだと語ってくれた。

二人で「富士屋」の暖簾をくぐると、祭りの見物客や半纏(はんてん)姿の客で大賑わいだった。

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「麺のコシとかすかな煮干し風味の醤油スープ、何とも言えないね。またこの肩ロースのチャーシューが淡白さを具合よくカバーしてるね」

「でしょう。もう秩父のラーメンっていったらココしかないのよ」

秩父神社の女神、妙見様と武甲山の男神が一年に一度出逢うという夜祭の神話のように、その頃、毎年、秩父夜祭に「富士屋」を訪れていた。でも彼女に再会することは一度もなかった。

この富士屋のラーメンを食べるたびにあの頃のことを思い出す。彼女もいい年だろうな。


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