御茶ノ水でサラリーマンを過ごしていた時期があった。その頃、たまに訪れていたのが「栄屋ミルクホール」。創業は70有余年。
バブルの余韻の残るまだまだ華やかな最中、奇をてらった創作料理賑やかに、今のラーメンブームの土台となる、創作ラーメンもちらほら出始め、中華屋、食堂の質素な食事がないがしろにされていた頃だったかもしれない。そんな慌ただしい中で、ホっと一息できる店がここだったように記憶している。
10年ぶりに訪れた。外装も内装もその頃とまったく変わっていない。
「ラーメンカレーのセット」
「は~い」
昔食べていたのがご覧のもの、950円だ。
カレーライスはこれと言って特筆するものはなく、ドロッとした舌触り、ちょい甘口、見かけより濃厚な味わいで、ドメスティックカレーそのもの。
秀逸なのはラーメンだ。醤油のエッジの効いたキリっとした奥深いスープに、硬質なストレートの細麺が素晴らしくマッチしている。
「醤油ラーメンはこうじゃなくっちゃ」
って感じ。ラーメンのバリエーションは8種類、その他カレー以外は鮭の「おにぎり」120円となっている。
この「ミルクホール」と称される店は、明治の初めごろから始まった飲食店の形態だ。主に牛乳を購入する客に限り、無料で新聞などの閲覧をさせていた店のこと。後にコーヒー、ケーキ、洋食などを扱う店に変化したもので、現存している主な店は、ここと、茅場町「桃乳舎」、江東区住吉の「ミルクホール若葉」などだ。
〈店舗データ〉
【住所】東京都千代田区神田多町2–11–7 電話03–3252–1068
【営業】10時30分~17時
【休日】土・日・祝
【アクセス】地下鉄丸の内線「淡路町駅」、都営新宿線「小川町駅」A1出口から徒歩2分