「このあいだ大山の『ライモンディ』に行ったら、榎本さんが大好きな板橋本町にある『AK Corner』で、常連さんとパーティーするんですよ、小野さんも来ないかなって言ってましたよ」
と飲み友の塚ちゃんからのメールだった。榎本さんとは「ライモンディ」のラスタなご主人のこと。ところで「AK Corner」ってどんな店だ? 調べたらタイやインドなどの多国籍料理の店のようだ。まったく知らなかった。
都営三田線「板橋本町駅」から17号を「本蓮沼」方面へ、4つ目の角を左折、
「あれ、これってイナリ通り商店街じゃん」
近所には「S&B食品」、スパー銭湯「スパディオ」など、よくフラフラしていた界隈だ。18時到着。中には塚ちゃん1人。
「まだ誰も来てないんですよ」
ご主人の角さんにご挨拶、長い顎ヒゲをを生やした若き仙人といった風情。厨房には奥さんもいた。聞けば世界60数カ国をバックパッカーで旅してきた強者。
「長く滞在したのがタイで1年半ばかりいましたね」
現地で「カオマンガイ」の専門店を出そうと考えていたそうだ。今日はないけど、彼の作った「カオマンガイ」を食べてみたい。
ほどなくして「ライモンディ」の榎本さんと奥さんが来場。
「どうも、本ありがとうございます」
本とは7月に刊行した拙著『東京の名店カレー・黄金色のスパイス51粒』のこと。ちょっと前に本を渡そうと「ライモンディ」に行ったら休みだったので、ポストにこの本を入れておいたのだ。
「いえいえ」
「この店大好きなんですよ。9月の9日で店を閉めるちゃうんですよ」
「ええ! そうなの」
「嫁に子供ができたので、地元の福井に帰ってそこで子育てしようかと」
と角さん。そうなのか…。
本日はコース料理「チリのポテトケーキ」、「インドのパニプリ」、「ブラジルのムケカ」、「ドイツのチキンシュニッツェルマッシュルームレモンソース」、「スリランカのライス&カリー」の5種類。
しばらくすると「ライモンディ」の常連が次々に来店。ボクと榎本さん角さん以外はみんな真っ当なサラリーマンの出で立ち。
ビールでカンパイ。
「ポテトケーキ」はじゃがいもをミルフィーユ状に重ね、チーズを乗せて焼いたものだった。これ美味しいね。
次に「パニプリ」。インドやネパールなどの屋台で出されるお菓子。これ見るの20年ぶりかな?
豆の粉で円形の空洞状のものを油で揚げ、その中に豆やトマトなどの野菜を入れたもの。これにチリやタマリンドなどで味付けした、酸味のある冷たいスープを入れてパクリといただく代物だ。ここれ実に爽やかで美味。
次に「ムケカ」。ブラジルのバイーア地方の郷土料理らしい。これ初めて。カジキマグロの上にヤシ油のソース、クリーミーでメチャ旨。
「チキンシュニッツェル」は言ってみればミラノカツだね。このレモンソースが旨い。
フィニッシュは「スリランカカレー」、チキン、豆、パイナップルカレーや、チリサンボル、ボルサンボル、それぞれが旨い。
「小野さん、ボクここのスリランカカレーが日本一うまいと思ってるんですよ」
とライモンディの榎本さん。確かにこのカレー各種よくできていてビックリ。全てをゴチャゴチャにかき混ぜていただくと、なお一層味わい深い。
各国の料理をこれほどクオリティー高くこしらえるのはたいしたもの。ご主人の角さんは器用な人だ、只者じゃないね。しかしこの店が9月の9日で無くなってしまうなんて、もったいない、もっと早く知っていたら、と後悔が残る。
〈店舗データ〉
【住所】東京都板橋区宮本町55–3 電話03–4771–7961
【営業】火~土11時30分~14時 18時~23時 月18時~23時
【休日】日・祝
【アクセス】都営三田線「板橋本町駅」A4出入口から徒歩5分