志木は縁が深い。就職のために新調したスーツとリーガルのプレーンシューズを購入したのがこの駅。2社目の出版社に移った頃、彼女が志木に移り住んでいたのでよく遊びに行っていた。
その頃、志木のある飲み屋で、ボクが面接した新卒の後輩とバッタリ遭遇。彼らと年がら年中飲んでいた。その頃よく通っていたのが南口の鳥ホルモン屋の「鳥一」。閉店していたのは聞いていたけど、久しぶりに訪れたらその跡地はマンションに姿を変えていた。
上板橋の居酒屋「かりん」のママから。
「志木に美味しい『長崎亭』っていうチャンポン屋があって、小野さん知ってる?」
「志木はよく知っているけど、そんな店あったかな…」
後日訪れた。東口から新河岸川方面。大通りを左折して柏町4丁目交差点のある志木大通りを左折してしばらく進むと右手に「長崎亭」が現れる。「ヤオコー」の斜向かいだ。
「この店見覚えあるな~」
店内は重厚な造りで、柱時計が25個も。その一つは今の時刻を指しているが、その他すべての柱時計は11時2分で時間を止めている。
これ長崎に原爆が投下された時刻だった。思い出した。彼女のアパートが比較的近所だったのでその頃たまに訪れていた店だった。
初代のご主人、2代目のご夫婦とその息子だろうか、4人で切り盛り。
メニューは皿うどん、ちゃんぽん。それぞれ具だくさんの松、普通盛りの竹、お子様用の梅に分かれている。
「チャンポンの竹と餃子下さい」
待つこと10分。
「コショウをかけると美味しいですよ」
チャンポンは彩の蒲鉾、タコ、エビ、アサリ、豚肉。キャベツ、モヤシ、キクラゲなど。
軽やかに乳化したスープはほどよい旨味、サッパリとして美味しい。
ストレートの太麺はちょい柔くモッチリ。
餃子は焦げ目が香ばしく、噛みしめるとザクっとした歯ざわり。
これ粗めに刻まれた野菜の食感で、下味がほとんどないのでタレに付ける旨い。
この店の雰囲気が妙に落ち着く。なんだかすごく居心地がいい。ご家族が醸し出す雰囲気がそうさせるのか。
店を後にして南口をしばらく散策。彼女が住んでいたアパートはあったが、すでに使われていない状態だった。店名は忘れたけど、色っぽい女将さんがいた居酒屋は駐車場に変わり、漫画家が経営していた「雷亭」も姿を消していた。
〈店舗データ〉
【住所】埼玉県志木市柏町4–5–20 電話048–473–7998
【営業】11時30分~14時30分 17時30分~21時
【休日】無休