この日は気分的に余裕があった。そんなときは遠出をしたくなる。
桜木町界隈の野毛、北千住、堀切菖蒲園、立石、三ノ輪、南千住、赤羽、どこにしようか…。悩んだ末。近場の王子に決めた。
田端から京浜東北線で王子に差し掛かった時、左手の窓外に怪しいネオンが灯っている。
「あそこなんだろうな」
「ホントだ、帰りに寄ってみようよ」
最初に目指したのは老舗居酒屋の名店「山田屋」。しかし地元のご隠居で満杯。
「じゃ『宝泉』で生ホッピーでも飲むか」
「そうだね。いいね」
ということで「宝泉」に突入。
コの字のカウンターが左右にセパレート。生ポッピーで乾杯。
しかしこのホッピー、焼酎がけっこうキツイので、2杯で充分、それ以上飲んだらハシゴが出来なくなるね。ちなみに1人3杯までとか。つまみは、
「ししとう」、「馬力豆腐」、「カツオ刺し」。どれも乙な味わいだ。
1人でもテレビがあるのでゆっくりくつろげるし、やや薄明かりで実にしっくりくるいい居酒屋だ。小1時間ほどおいとました。
再び「山田屋」を覗くと席が空いていたので突入。
だだっ広い店内、客は誰もニコニコと楽しげで、1人酒、老若のカップル、団体と客層は様々。とにかく賑やかで華があって実にいい。
新潟魚沼「青木酒造」の鶴齢純米超辛口でふたたび乾杯。この酒キレがあって実に美味。
「おからサラダ」と「あら煮」をつまみながら、緩やかな時間が過ぎてゆく。
「この店、やっぱいいね」
「うん。落ち着く」
早い時間帯は地元のご隠居たちで占拠されているけど、彼らは早く退散するので、予約が面倒ならばやや遅い時間帯が狙い目だ。
そして電車の窓外から見えたネオン街へ。飛鳥山公園とJRの線路の間にある横丁「さくら新道」に入ると店が軒を並べているがどこも閉店している。1軒だけ残っているのが「まち子」というスナック。
「大丈夫かな?」
酔った勢いで突入した。
「あ~らいらっしゃい」
とカウンターにはママさん、フロアーに同い年ほどの女性客。
「明朗会計よ、歌ってね」
ボクはサワー、連れは梅酒で乾杯。この通りの店が、なぜ閉店しているのか尋ねると、6年前に火災でこの状態に。
「地上げとかですか」
「違うのよ、この軒の2階に住んでいた女の子の家で、電気ストーブから布団に火がついてこのありさま」
なのだとか。
「でもここは大丈夫だったのよ」
もうこの地に50年とか。ママさんの若い時分の写真が隅っこに飾られている。
※さくら新道とこの店の新聞記事。
もうけっこうヘベレケ。2、3曲歌って退散。1人2、3千円だったかな。とにかく安かった。再来年の2020年にはここを撤退しなければならないそうだ。残念だね。
※常連のお客さんがお見送り。ハレーションをおこして、看板の文字が見えない。なんせ酔っていたものだから。
もうその後の記憶がないけど、楽しい心持で翌日目が覚めた。
〈店舗データ〉
【店名】宝泉
【住所】東京都北区王子1–19–10―102 電話03–3914–2726
【営業】平日17時〜23時 土17時〜22時
【休日】日・祝
【アクセス】JR京浜東北線「王子駅」北口から徒歩5分 地下鉄南北線「王子駅」4番出口から徒歩3分
【店名】山田屋
【住所】東京都北区王子1–19–6 電話03–3911–2652
【営業】8時~13時 16時~21時
【休日】日・祝
【アクセス】JR京浜東北線「王子駅」北口から徒歩5分 地下鉄南北線「王子駅」4番出口から徒歩3分
【店名】スナックまち子
【住所】東京都北区王子1–3–18 電話03-3918–5429
【営業】不明
【休日】不明
【アクセス】JR京浜東北線「王子駅」中央口から徒歩2分 地下鉄南北線「王子駅」2番出口から徒歩2分