本蓮沼、志村坂上界隈はサラリーマン時代、取引先が方々にあり馴染みの土地。
「何気に入ったラーメン屋なんだけどさ、なんか地味に美味しいんだよね。小野に評価してもらいたいなねって思って」
と友人の出版社の営業マン。彼もこの近所の取引先に寄った途中で2、3回訪れたそうなのだ。
ある日クルマで17号を真っすぐ。板橋区役所あたりから旧中山道を入り、帝京大学の裏通りから、環七の姥ヶ橋交差点を「国立スポーツ科学センター」方面へ。善徳寺交差点の手前を左折すると「赤おに。」が現れる。この道順、サラリーマン時代に使い慣れているんだけど、17号を真っすぐ行って志村警察署前を右折した方が早いかもしれない。この店駅からけっこう遠いのよ。
10時半ぐらいに到着して、開店時間も調べずに来たので店がやっていない。人の気配がするので扉を開けて、
「すいません何時からですか?」
「11時半からなんですよ」
「あっ、そうですか。わかりました」
と帰りかけると、
「ご飯ものは出来ないけど、ラーメンだったら大丈夫ですよ」
「ラーメンだけです、ありがとうございます」
いや~、臨機応変で素晴らしい。商売人はこうでなくっちゃ。
店内はL字のカウンター10席。2人席、4人席のテーブルが各1卓といったスペース。ちょい雑然としていて、ラーメン屋というよりは食堂兼居酒屋のような雰囲気。
厨房にはカレーの仕込み中のスキンヘッドの50前後の方と、テーブルで事務作業をしている60ちょい過ぎの方2人で切り盛りされている。
メニューは醤油、辛みそ、塩、つけ麺など。
「ラーメンと餃子下さい」
「醤油ラーメン」600円は、メンマ、ナルト、ネギ、バラの焼豚が2枚といったシンプルな絵姿。
スープを一口。醤油本来の味わいが生かされた美味しさとでも言おうか、微かに甘めで、素朴だけど深い旨味もあり、これいいわ。
薄い焼豚だけど美味しい、メンマも余計な味付けがされていなくて好感が持てる。
また中細のストレート麺が滑らかで口当たりが非常にいい。
「餃子」290円は、カリっとシットリ滑らか、旨味が充実でこれも旨いね。
「餃子も自家製ですか」
「そうですよ」
ちょい悩んで、
「辛みそラーメン下さい」
お2人とも驚いた様子。ほかのラーメンを食わずに帰るのが惜しい気がしたからだ。
「辛みそラーメン」700円は、中央に辛みそ。
スープを味わうと、これも醤油同様、味噌本来の美味しさが生かされていて、一瞬味噌が立ち過ぎているような感じだけど、ほどよい旨味と相まって美味しいのだ。
辛味噌はどこか豆板醤に似た風情でやや塩辛いけど、辛味がフレッシュでこれもいい。スープに徐々に溶いていただくとまた味わい深くなる。
「この辛みそも自家製ですか」
「そうです」
山形にある「龍上海」の辛味噌より、なんか好きかも。友人の言っていた「地味に美味しい」という表現が理解できた。華々しさはないんだけど、しみじみする美味しさなんだよな。
今度は塩とつけ麺、それとスキンベッドの方が仕込んでいたカレーライスも食いたいな。
〈店舗データ〉
【住所】東京都板橋区小豆沢1–1–21 電話03–5392–5007
【営業】11時30分~15時 17時~22時
【休日】月
【アクセス】都営三田線「本蓮沼駅」A2出口から10分 都営三田線「志村坂上駅」A1出口から徒歩15分