ちょっと前に、溝の口にあるスーパー銭湯「喜楽里」でひとっ風呂浴びたその帰り、チキンカレーやマサラカレーのノボリを出している怪しい店を発見した。
「気になるな…」
数か月後、溝口に舞い降りた。南口から第三京浜へつながる通りを真っすぐ。「洗足学園」を過ぎ「末長交番前」の小さな交差点のそばに「友季」が現れる。10数分歩いたかな、想像していたより遠い道のりだった。
「いらっしゃいませ」
店内は狭小で、4人席テーブルが2卓。壁にはメニューと共に薬膳の効用の能書きが、店主の女性から色々説明されるが難しくてよくわからない。
「お勧めはAセットですね」
「そうですか、じゃAお願いします」
伺えばこの地にオープンして21年とか。実家は長野で、家業が漢方薬局。管理栄養士の資格を持つという。非常にフレンドリーな方だ。
「この通りシャッター閉まった店が多いですけど、昔はどうだったんですか」
「今は閑散としてるけど、飲み屋さんがけっこうあったみたいで賑やかだったらしいわよ」
「はい出来ました、1000円になります」
この店はセルフサービスで、出来上がった料理をカウンターまで取りに行き、料金を支払うシステム。
ご覧のAセットは右下が黒ニンニク、その上が油茶、左が薬膳カレーだ。
油茶とはクルミ、松の実などのナッツ類をクラッシュ、クコの実、紅花などが入った仄かに甘いスープ、まるでデザートのようだ。
「それに白玉入れると美味しいのよ」
「これ白玉入れたら間違いないですね」
効能は滋養強壮、腎臓機能の向上、美肌、動脈硬化の予防、便秘解消など。
薬膳カレーは雑穀米にダークブラウンのカレーには自家製の辛くないラー油。一口味わうと仄かな甘味と微かな酸味、塩加減がやや薄めながら、穏やかに旨い。
「美味しいですね」
「よかった」
具は玉ねぎのみ、スパイスと鶏スープで仕上げられたもので、体の芯から徐々に癒されていくようなまさしく薬膳カレーだ。薬膳といっても薬臭い感じは一切ない、ようはスパイスそのものが薬膳なので、体制に影響がないのは当たり前。味わいは吉祥寺コピス(旧伊勢丹)の地下にあった印度屋のカレーにどこか似ている。途中黒ニンニクをちぎってカレーにかけるとまた美味しい。卓上に辛いラー油もあるのでお好みでかけるのもいい。
「辛くないけど、なんか体がポカポカして汗かいてきましたよ」
「そうでしょう」
効能は血液、リンパの流れ良好。発汗作用、便秘解消、胸やけなどだ。
要予約でコース料理もあり、参鶏湯や牡丹鍋などもあり、長野出身らしくお焼などもある。
いずれにしてもこの店は面白い。料理教室も開いていて、ソバ打ちも体験できるようだ。
駅からちょい離れているけど、今度は薬膳粥や蛤カレーうどんも試してみよう。
〈店舗データ〉
【住所】神奈川県川川崎市高津区末長1055 電話080-5518-6650
【営業】11時~14時 18時〜22時
【休日】月
【アクセス】田園都市線「溝の口駅」南口から徒歩11分 JR南武線「武蔵溝の口駅」南口から徒歩10分