元祖 カレー研究家 小野員裕

新大久保「めとき」今は亡き病みつきのラーメン

「めとき」の営業が滞ってきたのは、ここ1、2年になるだろうか。ご主人はご病気で、ちょっと元気な時は営業してるんだけど、ほとんどが休みがちだった。

「今日やってるかな?」と、店の前を通り確認するが、やってない「ああ、またか…」。でも、たまに営業している時は嬉しくて仕方がなかった。某居酒屋の常連で、シテムエンジニアのKさんという方がいて、

「店のオレンジのテントの看板が消されていてさ、もう復活することはないんだなって、悲しくなっちゃったよ」

そうつぶやく彼のギラギラとした眼差しは、冒険家の三浦雄一郎にどこか似ている。彼は「めとき」から1分のところに住んでいたことがあり、週一で通っていたそうだ。ここに掲載されている写真は、そのKさんから拝借したもの。僕もデジカメとネガで撮っていたはずなんだけど、これが全く見当たらないんだよね。

「めとき」はかつて、2階にも客席があり冷やし中華などのメニューもあったらしいのだが、手が回らず、ラーメン一品勝負になった。昔はレジがあり、客がそこにお金を入れて、勝手に釣り銭を持っていくシステムだったそうだが、悪い客がいたらしく勘定が合わずに廃止。それから注文の際に目の前にある小皿に代金を置くように変わった。

ラーメンは「永福町大勝軒」系ながら、一味違う。やや褐色の醤油スープは仄かな煮干しの香り、麺は少々柔らかめで、他店の2倍ほどのボリュームで「中華麺小盛」で十分だった。大ぶりな焼豚はかつて煮豚だったはずなんだけど、ある時から低温調理の焼豚に変わった。具はひき肉とあえてある細メンマ、これ旨し。そしてネギ、ナルトと海苔。ほどよい脂加減で、醤油のキリっとエッジの効いたスープ、美味しかったんだよね。

媒体の取材を断り続けたいた店だったけど、穏やかな人柄の優しい主人だった。

※ご健康な頃のご主人と中華麺。

上板橋にある「魂の中華そば」というラーメン屋の店主が、

「今度『めとき』風のラーメンを夜に出そうかなって考えているんですよ」

と言っていた。よしよし、ぜひ作ってくれ。「めとき」へのオマージュラーメン、期待していますよ。