元祖 カレー研究家 小野員裕

小台「北珍」誰も知らない街の中華屋。油そば旨し!

 

この場所はちょっとした離れ小島で、店へのアプローチも様々だ。最寄りの駅は都電荒川線「小台駅」で、「小台大通り」の脇道の「小台銀座本通り商店街」を明治通り方面へ抜け切ったところにある中華屋。実はこの日、近所にある錦州餃子の「華味」に行くつもりだったけど、どうも開店する気配がない。

「しょうがない、プラプラするか…」

で見つけたのがこの「北珍」だ。

店内は手前左手に小上がり、右手奥にカウンター席、テーブル席とわりと広い造り。60後半の職人風情のご主人1人で切り盛りされている。

ファーストチョイスなのでラーメンと餃子を注文しようと思ったけど、メニューの4番目に「油そば」550円を発見。気になる…。

「油そばと餃子下さい」

「はいよ」

しばらくすると女子学生が一人入店。

「油そば下さい」

「ニンニクたっぷり入ってるけど大丈夫? 抜きもできるし生姜にも代えられるよ」

「じゃ生姜でお願いします」

登場したのがご覧のもの。

「写真撮っていいですか」

「撮るのはいいけど変なこと書かないでね」

「あっ、すみません」

と女子学生。自分に言われたのかと勘違いしたのか、えらく恐縮している。

「ここの油そばが美味しいって友達から聞いてきたもので」

ふ~んどうやら名物料理らしい。

彩のたっぷりのサヤインゲンにナルト、大きな目焼き豚、モヤシなど。ぐちゃぐちゃにかき混ぜる。

麺は平打ちの縮れ太麺、一口、ねっとりとした舌触り、旨味充実で円やかな口当たり、

「これ旨いな~」

複雑な旨味のハーモニー、この麺によく絡みつく、ご飯と一緒に食べたくなった。

「餃子」350円はシットリとした餡、これは醤油ダレに浸して食べるといいね。

「方々で色々書かれてるけど、60年前に俺のオヤジが考案したメニューでさ、これ麺が太くて茹でるのがたいへんなんだよ」

とご主人が突然しゃべりだす。

「そうなんですか、これメチャメチャ旨いっス」

「そうかい。手間かかって550円で出すの、けっこう大変なのよ。まあ、好き勝手に書いていいけどお手柔らかにね」

「なんか変なこと書く人いるんですか?」

「いるのよ、困っちゃうよ」

とのことだ。これメチャ旨いのに。

「はい、これね」

と出されたのがヤカンに入った割りスープ。

余った汁にスープを入れて飲むと、複雑で奥深い美味しさ、これいいね。

この「油そば」病みつきなにさせられるクセが潜んでいる。今度来るときは大盛りだな。

〈店舗データ〉

【住所】東京都荒川区西尾久4–1–11 電話0338932820

【営業】11時から14時 17時~20時

【休日】火曜

【アクセス】都電荒川線「小台駅」から徒歩約9分 JR京浜東北線「尾久駅」出口から徒歩約10分 JR山手線・京浜東北線「田端駅」北口から徒歩10分 日暮里舎人ライナー「赤土小学校前駅」西口から徒歩10分

東京都荒川区西尾久4–1–11