元祖 カレー研究家 小野員裕

渋谷「喜楽」底力の美味しいラーメン

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キラビヤカで情緒不安定な若者が、僕の学生の頃と変わらず今も戯れている渋谷。そんな輩からいつも浮いた存在なのに、渋谷で遊ばなきゃ学生じゃない、という強迫観念に囚われていた時期があった。

果たして、まばゆい軽薄な人ごみを逃れて、道玄坂をちょいと上がった右手の「百軒店」(ひゃっけんだな)という、新宿や池袋に似たベタな人間臭のする、この横丁に逃げ込んでは幼い傷心を癒していた。

「喜楽」はそんなときに出合った。

今では綺麗な店舗に変貌したが、大衆食堂と見紛う中華屋だった当時から、ラーメンは飛び抜けてうまかった。

※これはワンタン麺

豚ガラと鶏ガラから抽出した醤油スープに香ばしい揚げネギ、パスタのフェットチーネを思わせるコシのある中太平麺。シャキシャキのモヤシ、肩ロースの焼豚、固茹の味付け玉子。スープを一口、続けで麺をズズっーとすすれば、あれよという間に完食してしまう美味しさ。

いつの時代も目先の思惑に流され続けている渋谷にあって、「喜楽」の味わいは、しっかりと地面に根を張った安心感に満ちあふれている。