まさかこんな洒落た空間に、胃袋を躍動させるカレーがあるなんて想像もしていなかった。開店はおよそ5年前である。
「店をオープンするとき、お客さんにランチの時間を有効に過ごしてもらえるメニューはないか考えたんです。そうだ、僕の好きなカレーを出せばいいじゃないか、って思いましてね…」と語るのは店主の小松誠氏。それからは思考錯誤、国会図書館まで訪れ、ヒンディー語のインド料理本を訳す凝りよう。果てして、試作6品の中で唯一「これはいける!」と、ひらめいたカレーに出合ったそうなのだ。
「オーディオ機器って、アンプやスピーカーのパーツを変えるだけで音ががらりと変わるんですよ。カレーも一緒で、各メーカーのスパイスを吟味しながらカスタムして、ブラッシュアップさせたのが、このカレーなんです」
その真紅に輝く色合いのカレーを見た途端、食欲がかきたてられる。具は岩手の阿部鶏のもも肉、これが実に柔らかく、サラサラなソースは仄かにスパイシー、微かな酸味、充実した旨味と絶妙な塩加減に、食べ始めたらスプーンが止まらない。決してインパクトのある味わいじゃないが、徐々に胃袋を活性させる、そんな底力に満ちているのだ。
基本はランチメニューなので、夜は品切れる可能性あり。またバータイムは、チャ―ジもかかることをお忘れなく。