この店を発見したのは数ヶ月前。大塚駅北口から「銀の鈴通り」の商店街を抜け、大通りを渡ってしばらくすると右手にカレー専門店「ツリートップ」がある。ここでたまに食事をすることがある。駅からかなり離れているので滅多に来ないけど、食後この界隈をプラプラ。
「あれ、こんなところに洋食屋があったんだ。全然気づかなかった」
その数ヵ月後「洋食あかね」に飛び込んだ。メニューは30種類に加え「本日のサービスランチ」となっている。
面白いのはメニューに1つ1つに気の利いたキャッチコピーが書かれていること。例えば「ポークチャップ」は「病い知らず」、「ポークヒレカツ」は「慕情の味覚」、「スパゲッティアメリカ風」は「甘く切なく最高に」など、なんだか眺めていて顔がほころんでしまうのだ。
店内は右手にカウンター6席、左手に4人席のテーブル、というよりはボックス風2席、どこか昔の純喫茶のようだ。お年を召したご夫婦で切り盛りされている。
ご主人はキリっとコック服スタイル、いいね。サービスランチをオーダーしたいところだけど、店の基本がわかる「ハンバーグステーキ」650円+「ライス」200円を注文した。
「料理の写真撮っていいですか?」
「ああ、どうぞ、いまみんなよく写真撮っていかれますね」
「そうですか」
「この店はもう48年やってるんですよ」
「えっ、48年っていったら、ボクが9歳の頃からか…」
小学生の頃、地元にあった洋食屋の風景が途端に蘇った。2軒ばかりあったけどずいぶん昔に閉店してしまっている。「サーモンソテー」や「グラタン」、「ポークジンジャー」を初めて食べた時のことを思い出す。
登場したのがステンレスの小判皿にデコレートされた食欲をそそるボリュームの絵姿。キャベツ、レタス、パセリと野菜やや豊富。スパゲティーにハンバーグ、目玉焼き、洋食王道のコンビネーション。そしてハンバーグを一口「メチャメチャ旨い!」。
ハンバーグの断面は密度が高く、硬そうなイメージだが、これがほどよく柔らか。細い挽き肉と繊細な玉ねぎとの合わせの妙だろう。デミグラスソースもわずかな酸味で円やかな美味しさ。付け合わせのスパゲティーもしっかり味が染みていていいね。
「これ美味しいですね」
「ありがとうございます」
久しぶりに出合ったきちんとした洋食だ。「カニコロッケ」、「ポーク生姜焼き」、「オムレツ」、「ポークチャップ」が無性に食べたい。跡継ぎもいないようだし、ご高齢なので大事にしたい店だ。近々また訪ねよう。
〈店舗データ〉
【住所】東京都豊島区北大塚3-31-9進藤ビル1階 電話03-3910-4722
【営業】11時30分~22時
【休日】日・祝
【アクセス】JR山手線「大塚駅」北口から徒歩12分 都電荒川線「巣鴨新田駅」から徒歩3分