千石にある友人宅に野暮用があり、そこをお邪魔したあと連れと界隈をプラプラ。
「なんかこの酒屋気になるな…」
中を覗くと角打ちで、メチャメチャ賑わっている。
巣鴨方面、中仙道(17号線)の千石1丁目交差点から茗荷谷方向へ、6つ目あたりの路地を右折、住宅街に突如現れる角打ちの酒屋「十一屋能村酒店」。
入口左手に保冷庫、右手におつまみの陳列棚、紛れもなく酒屋だ。奥にはやや広めのスペースがあり、子供連れの家族、カップル、独り者の客がテーブルに腰を下ろし、誰もが穏やかな表情で酒宴に興じている。特に驚いたのは子供がいることだね。角打ち特有のデカダンスな空気感は皆無で、決して綺麗な店じゃないけど、どこか品のいい風情が漂っている。
飲み物は、サッポロラガー、キリンクラシックラガーの大瓶390円、中瓶340円。サワー各種260円から300円。日本酒各種は320円から520円、ウイスキーは山崎、白州430円、竹鶴360円、アードベック580円など、破格。つまみは20種類ほど、「山芋のバター焼き」や「酒粕ピザ」なんて気の利いたものもある。
連れととりあえず缶ビールで乾杯。小ぶりな銅製のビールグラスとは気が利いている。
「トイレどちらですか?」
「ここ初めてですか?」
と40前後の店主。
「こちらです」
レジ後ろの扉を開けて上がると、ベッドのある寝室、なんとも微笑ましい。そこを通り過ぎて右手の奥がトイレ、その扉は古の木製鍵。いやはや年季が入っている。
メニューにない酒は、保冷庫にある酒の定価の50円増し。角打ちには珍しく、棚には数多くのキープボトルが並んでいる。
フロアーのお姉さんはてっきり奥さんと思っていたら、
「もともと常連で、ここでお世話になってるんです」
う~ん面白い。
「お酒を出すようになって何年ぐらいですか?」
「8年目になります」
常連客特有の威圧感はなく、誰もが話し上手。また毎日来ているというご隠居がなんともいい人柄。フロアーは禁煙だが、換気扇の下が喫煙スペースとなっている。
「これお願いできますか」
と小さなメモ書き、「芳名帳」だった。ボクは1558番、連れは1559人目の客のようだ。
とにかく不思議な空間で居心地がいい。またこの店には華があるね、これは店主の人柄と客層がいいからだろう。近所にあったら、おそらく週3で通ってしまうね。
〈店舗データ〉
【住所】東京都文京区千石3–38–11 電話03–3941–1911
【営業】16時~22時
【休日】日・祝
【アクセス】都営三田線「千石駅」A4出口から徒歩6分