「入口のカウンターは暑いから、もっと奥に座ったほうがいいですよ」
と店主。
「あっ、はい」
「いらっしゃい。麦茶さっき作ったばかりだから、しえて(冷えて)なくてごめんね」
とおばちゃん。
この定食屋、町屋駅から都電沿いの横丁を入った直ぐにある店で、入口右手に狭いカウンター6席に左手に小上がり2人席2卓、奥の座敷は4人席1卓のスペース。
老夫婦で切り盛りする超アットホームな雰囲気に心が和んでくる。
「すき鍋ランチください」
「はいよ」
ちらほらと近所のご隠居たちが集まってくる。よそ者はボク1人で、客はほぼ地元民だ。
「すき鍋ランチ」1000円はご飯、味噌汁、卵、浅漬け。すき鍋は牛肉に豆腐、シラタキ、お麩、長ネギ、白菜となっている。
まずは卵を溶いて、白菜と一緒に牛肉を一口。
「ほどよく甘口でいいね」
特別感のあるものじゃなく、ごく普通の味わいだけど、定食屋でこの手のメニューは滅多にないからありがたい。それとこの牛肉は黒毛和牛のようだ。ご飯にはちょいお焦げがあっていい。浅漬けはややボリュームがあり、味噌汁が美味しい。この定食屋は老夫婦の穏やかなキャラクターと常連たちの風情がシンクロして、ご飯がますます美味しく感じるんだと思う。
「ごちそうさまでした」
「ありがとうね」
帰り際ご隠居たちが「今日はバター焼きね」、「あたしは生姜焼き」と注文。食べたばかりだけど、気になって仕方ない。また来なくちゃ。
〈店舗データ〉
【住所】東京都荒川区町屋2–9–25電話03–3892–4928
【営業】11時20分~14時30分
【休日】月
【アクセス】都電荒川線「町屋駅」から徒歩2分・地下鉄千代田線「町屋駅」1番出口から徒歩2分 京成線「町屋駅」から徒歩3分