茅場町にある「牛幸」は、ある店の取材の帰りに偶然発見した、10年ほど前のことだ。 「なんだこの行列は! 明日もう一度確かめに来るか……」 ということで、翌日の11時頃に訪れた。
「随分並んでますけど、何がおすすめなんですか?」
と前列に並ぶOLさんに尋ねると、
「限定30食のハンバーグがオススメですよ、だからみんな開店前から並んでるんです」
と笑顔で教えてくれた、ショートボブがメチャ可愛らしい♥
「ハンバーグ、すき焼き、どちらにします」
と開店前に従業員が事前に注文を取りに来る。間髪入れずに、
「ハンバーグお願いします」
座敷にあがるとテーブル席に四角い鉄板が温められていた。
おしぼりとお茶、大根のサラダに小さなお新香、ハンバーグの漬けダレ、そしてインゲン、人参、こんにゃくが並ぶ。
次に表面だけ焼かれたハンバーグを鉄板に置くと、仲居さんがヘラで四等分にカットしてくれる。
「レアですので、お好みで焼いてください」
とりあえずレアのままいただくと実に旨い、程よい味付けがされていて、塩コショウは多少使われているのだろうが、ナツメグなどの混ぜものがされていない牛肉100%の味わい。
次にほどよく焼いてまた一口、これもいい。そして漬けダレにくぐらせるとまた旨い。
醤油ベースのタレは仄かな甘味で塩梅がちょうど、いたずらに甘くないのに好感が持てる。
野菜、こんにゃくも鉄板に乗せて温めてハンバーグと一緒に頬張る。ご飯が進む。
最後にデザートのシャーベットを頂いてフィニッシュ、税込1080円はお得だ。
この数週間後に夜に訪れ、一通りいただいた。メニューはしゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキなどだが、それぞれ創意工夫に富んでいるのが面白い。
例えば「しゃぶQ」は、ステーキを焼く鉄板の四角に溝があり、焼いた肉汁がその溝から鉄板の周りのキムチ、豆腐、白滝、野菜が入ったスープに流れる構造で、徐々にそのスープに旨味が増してゆくという代物なのだ。また「陶板土火焼」はディナータイム限定メニューだが、これもまたアイデアメニューだ。周りにモヤシ、ニラが敷きつめられ、その上に八丁味噌ベースのスープがあり、そこにしゃぶしゃぶのように牛肉をくぐらせ、卵でいただくのだ。さらに陶板で牛肉をダイレクトに焼いて食べるのもよし、焼いた牛肉を味噌スープに浸していただくなど、いろいろな食べ方が楽しめる。またなんといっても、ここで扱っている黒毛和牛の美味しいこと、メニューによって肉の部位は変わるが、ほどよい霜降り、口中でとろける柔らかさは格別で、なおかつ価格が良心的なのだ。
この「陶板土火鍋」の〆は雑炊、これがいい。大根の菜っ葉の一夜漬けが刻まれたもので、サッパリとして実にうまいのだ。
店主に ハンバーグのことを伺うと、各料理に使われる様々な部位の牛肉をカットしたあまりで、ハンバーグをこしらえているらしい。だから30食しか出せないのだそうだ。
このハンバーグ、なんと12時頃には完売してしまう人気振り。興味のある方は、11時すぎに並んで確かめてみるのもいいぞ。