「小野さんに紹介したいステーキ屋があって、これからどうですか」
「ステーキか、いいね」
この日は下町のはずれにある味わいの居酒屋に寄っての帰りだった。場所は上野、御徒町、天神下からもアプローチできる湯島の飲食街の横丁だった。このステーキ屋、著名な方も訪れるかなりの有名店のようだけど、ボクはまったく知らなかった。
店内は縦長で、入口から左手奥の上等な席に通される。目の前にはステーキを炙る暖炉のようなもの。
「あれ、オヤジさんいないな」
とボンボン社長。
「いると高いの食えっていつも言われるんだけど、オヤジさんの話が面白いんですよ」
「残念だったな」
「でも好きなの頼めるんで」
21時過ぎて客のピークが過ぎたようで、我々2人だけ、ゆったりできる。
ということで、2軒目なので腹具合もそこそこなので「スペシャルリブステーキ200g」3500円とグラスの赤ワインをオーダーした。サラダとともに2種類のドレッシングとステーキソースの登場。
まずはサラダで胃袋の準備。そしてコックさんがステーキ肉を持ってくると、炭火で炙りはじめる。
肉の表面をトングで叩きながら、余計な脂を炭火に落とすと、パチパチ弾ける音とともに、香ばしく焼き上が肉の匂いに食欲が翻弄される。そして焼きあがったステーキが目の前に。
「おお! メチャメチャ旨そ~」
パリっと焼けた表面はほどよく狐色。フライパンや鉄板でソテーしてもこの焼き具合は表現できない、やっぱ炭火はいいね。付け合せは蒸しジャガイモに、ニンジン、インゲン、コーン。輪切りのレモンの上はペッパーバターかな? まずはそのまま一口。
「旨いね~。香ばしくてたまんないな」
焼き具合はミィディアムレア、悪戯に柔らかくない歯ごたえ、この肉質が真骨頂。そしてステーキソースはやや濃厚でわずかな甘味、これは悪くない。寿司、天ぷらなどすべてそうだけど、やはり目の前で調理されるのは特別感があるし、さらに美味しさが倍増するもの。まして暖炉の炭火っていうスチュエーションがいい。高価な牛肉で鉄板焼きもいいけど、炭火で炙る肉は廉価なものでもそれだけで美味しいんじゃないかな。
〈店舗データ〉
【住所】東京都台東区上野2–8–9 電話03–3835–4999
【営業】17時~23時
【休日】第3日曜日
【アクセス】地下鉄銀座線「上野広小路駅」3番出口から徒歩2分