元祖 カレー研究家 小野員裕

御徒町「民華」の美味しい中華

 駅周辺の料理屋は、個人経営の店が少なくなった。どこの町に降り立っても同じ看板やメニュー、作り手の魂が感じられないものばかり。それにより、地域の個性は失われ、面白みのない軒並みに様変わりしてしまった。

当然御徒町界隈も例外ではないが、創業昭和22年の「民華」だけは変わらず、近隣に愛され続けているいい中華屋なのだ。

かつて『週刊朝日』で連載を持っていた頃、ここのラーメンを紹介したことがあった。いま流行のダブル、トリプルスープなんていう小賢しいラーメンとは違い、清湯スープに醤油というシンプルでエッジの効いた味わいは、いついただいても胃袋が癒されるのだ。また、単品料理も文句なしで、

特に「レバー焼き定食」これがいい。片栗粉でコーティングしたレバーをサっと炒め、ちょいと甘辛いタレで味付けしたものだが、ご飯が進むのだ。また餃子は「フルサイズの餃子はちょっと多いかな?」という輩にはもってこいで、2個から1個ずつ注文できるのがありがたい。

「実は『下町洋食』っていうメニューがあるんだけど、いま人手が足りなくてね……」

と店主の古俣茂氏。そのラインナップはポークソテー、チキンライス、ポークライス、ドライカレー、オムライス、カツカレーなどなど。でもお客さんの少ない時間帯なら頑張って作ってくれるそうなので、ぜひ試してもらいたい。

フロアーのお姉さんたちは実に気さくで親切、故にその美味しさも相乗する。こういう中華屋っていまなかなか見当たらなくなったのだ。