「馬場にあるベルギービールバーのマスターの知り合いが、湯島でカレー屋やってるって聞いたんで行ってきたんですよ」
「なんて店?」
「『ホンカトリー』って店で、なんか面白い店で、カレー美味しかったですよ。行ったことあります?」
「前から店は知ってるけど、まだなんだよ」
と友人の千ちゃんからの情報。この「ホンカトリー」の隣に「江戸富士」というランチで海鮮丼を売りにしている店があり、ここを訪ねた時に認識していた。でもこの辺りに来るとついつい「大至」でラーメンを食べてしまい、行きそびれていた。
開店前にボク1人。相変わらず「江戸富士」には行列ができていた。11時ちょい過ぎにオープン。
「どうぞ」
と40半ばのヒゲにメガネのご主人。店内には何かのフライヤーがテーブルや壁にデコレートされ、その奥にL字のカウンター9席となっている。打ちっぱなしのコンクリートの壁面、極めて綺麗な内装で、またゆったりとしている。
「今日は焼き小エビと塩豚です。焼き小エビはこれですね」
とご主人が袋に入った九州産の焼きエビを見せてくれる。初めての店なので、焼き小エビは冒険だと思い、
「塩豚お願いします」
となった。厨房の中も清潔で、なぜか保温機ではなくコンテナにライスが移してあった。カレーを作る作業を眺めていると、ライスにパプリカ主体のブレンドスパイスをふりかけ、そこにいろいろな添え物をあしらってゆく。
「はいどうぞ」
バスマティライスの上にはゴーヤ、ズッキーニ、シリアル、煮干など、ボール型のものはヨーグルトソースがかかったファラフェル(中東のひよこ豆のコロッケ)。なんだか面白いね。
カレーは別皿にたっぷり。一口いただく、
「う~ん美味しいね」
突出したスパイス感はなく全てがうまい具合に融合。仄かな酸味、控えめな塩気、軽やかな旨み、穏やかに旨い。
ふと、新宿3丁目の「草枕」と神田の「葡萄舎」のカレーを思い出した。どこか似ている。
「いま新玉ねぎのシーズンなんで、水気が多いんでそれに合わせてカレー作りました」
と何気なく話し出す。主人は見た感じとっつきにくそうな雰囲気なんだけど、真逆。
「メニューは日替わりですか」
「3、4日で入れ変わりますね」
「店始める前はなにされてたんですか」
「海外ビールの輸入販売してたんですよ。カレーは独学ですね。まあレシピ本もちょっとは見ましたけど、自分の心になんか伝わってこなくて、ほとんど見てませんね」
「このカレーホント美味しいですよ」
「そうですか。ちゃんと勉強してないから、落としどころがわからなくて、日々進化しているっていうか、迷走してますね」
とのことだ。なんだかここの主人面白いヤツだ。
※コレがファラフェル。
煮干も不思議にこのカレーに合うし、ファラフェルもホクホクで旨い。この店通いたくなった。
「今度来た時はたぶん全く違うカレーになってるかもしれませんよ」
「迷走しているからでしょう。ブログ載せますんで顔写真いいですか」
「やめてくださいよ、ボクの顔が載ってたらお客が来なくなっちゃいますよ。ハハハ」
なんだかほのぼのとしてしまった。
〈店舗データ〉
【住所】東京都文京区湯島2–7–9 電話なし
【営業】11時~19時 土11時~18時
【休日】日・祝
【アクセス】JR中央線・総武線「御茶ノ水駅」聖橋口から徒歩6分 地下鉄「丸ノ内線「御茶ノ水駅」1番出口から徒歩6分 東京メトロ千代田線「湯島駅」5番出口から徒歩7分