仕事が一段落して一服していると電話が鳴る。
「小野ちゃんこの後ヒマ?」
「うん、大丈夫」
「西川口にさ、美味しい中国鍋出す店があるんだけど、行かない」
「いいよ」
ということで、西川口駅前交番に18時30分集合となった。メンバーはカメラマンの鵜澤君とデザイン事務所の社長、中尾のとりあえず3人。
「そこって『滕記熟食坊』のこと?」
「そうそう、よく知ってますね」
この店は鵜澤君がちょっと前に取材した店だそうだ。ボクもここの存在は知っていて、訪れようと思っていた矢先だった。
「日本語がほとんど話せなくて、予約入れられないんで、空いていたら突入しましょう」
とのことだ。西川口はかつてピンク街で名を馳せていたが、今はリトルチャイナタウンと化していて、故に方々に中華料理屋が点在している。表通りの横丁にド派手な看板が出現、鵜澤君が店で交渉。
「ラッキー、一卓だけ空いてます」
店に突入した。店内はやや広めでテーブルが5卓、それぞれにでかい鍋が設置されている。先客は中国人の6人客、一斉にボクたちに視線を投げる。まずは生ビールで乾杯。しばらくするとフードコーディネーターのタカハシユキちゃんが現れてメンバー全員が揃った。
オーダーは「東北農家の煮込み鍋」と、「豚足」、「豚の燻製」、「干し豆腐サラダ」、「水餃子」など。
暫くすると予約の客が押し寄せて満杯、ボクたち以外はすべて中国人だ。
途中5年物の紹興酒に切り替えて鍋を待つ。この鍋、直径は70cmほどあるかな、店のお姉さんが鍋の蓋を外して油を投入、また蓋を閉める。
再び現れて盛りだくさんの野菜(モロッコインゲン、ジャガイモ、カボチャ、モチキビ)にスペアリブを投入してかき混ぜてまた蓋をする。
次にヤカンで水を注ぎまた蓋をして沸騰したところで、黄色い饅頭のようなものを鍋の側面に叩きつけてまた蓋をする。
この東北鍋は、上野にある「味坊鉄鍋荘」で似たようなものを体験済みだ。
「待ち遠しいな~」
蓋を開けるとものすごい湯気が立つ。出来上がり。それぞれ取り分けて一口。
「美味しいね」
「けっこう油入れてたけど、その感じがしないな」
「たぶんいい具合に乳化してるんだと思うよ」
味は醤油ベースで旨味、塩加減がちょうどいい。モロッコインゲン、カボチャなどホクホク。
またモチキビ(トウモロコシの原種のようなもの)嫌味な甘さがなく、プリプリでスペアリブは肉離れがよく柔らかで、トウモロコシ粉でこしらえたパンがシンプルで美味しい。
「あ~、もうお腹いっぱい」
給仕のお姉さんに出身を伺うと、
「アタシタチハルピンヨ」
中国の東北って聞くと餃子しか思い浮かばないけど、こういう迫力の鍋もあるんだね。余ったものは包んでもらって帰ることにした。
隣の子連れの中国人夫婦が食べていた鯉丸ごと一匹を煮た「鯉鍋」が気になって仕方ない。こんどは別の友人を誘ってみたいな。2軒目は王子の居酒屋にちょこっと寄って帰路についた。
〈店舗データ〉
【住所】埼玉県川口市西川口3–20–12 電話048–258–8888
【営業】13時~24時
【休日】月
【アクセス】JR京浜東北線「西川口駅」西口から徒歩5分