北新宿、百人町、高田馬場にほど近い、小滝橋界隈を徘徊していて、「玲音」が目に留まった。
「ショットバーかな? あれ、メニューは中華料理だな…」
と半地下の店へ突入。ご夫婦だろうか、ご主人は50前ってとこか。二人ともどこかあか抜けている。とりあえずスタンダードに、
「ラーメンと餃子ください」
「塩にしますか、醤油にしますか」
「醤油で」
餃子はビックリするほどの羽根突き、一口噛みしめるとサクッとほどよくジューシーな餡、よくできている。何気に厨房を覗くと大きな寸胴でしっかりスープを引いている。
そしてラーメンのスープをすすると、余計な調味料が使われていない純粋な清湯だ。たぶん化学調味料を極力抑えているか、まったく入っていないのだろう。麺はやや縮れの細麺、茹で加減がちょうど。これ550円って破格だね。
ラーメン専門店じゃないので、スープの旨味は軽め、それは他の料理に影響するからだ。仕事が丁寧で感じもすごくいい。
「美味しかったです」
「またお越しください」
後日、高田馬場の魑魅魍魎(ちみもうりょう)が集う立ち飲み屋「あけぼし」で、「玲音」の話をすると、
「たまに行きますよ、あそこは美味しいですね、たしか『一番飯店』で働いていたって聞きましたよ」
と馬場にある鶏ラーメン専門店「三歩一」の松ちゃんが教えてくれた。「一番飯店」とは漫画家、故手塚治虫さんもよく通っていた馬場の人気中華屋だ。
そして再び「玲音」を訪れ、メニューを眺めると「噂のたまごカレーごはん」というメニューが目に留まった。
「たまごカレーごはんってどんなものですか?」
主人が厨房から出てきて、僕に雑誌を見せてくれた。あれ、カレー特集じゃないか、先にやられた。
「美味しそうですね、じゃこれ下さい」
しばらくして登場したのがご覧のカレー、まるで大阪なんば「自由軒」の「インデアンカレー」をホウフツ。いただくとこれが旨い。仄かな甘みとほどよい辛味、さらりとした口当たりで、カレーリゾットといった風情。生卵の黄身がすごい小っちゃい、ウズラとニワトリの中間ぐらいの大きさで、烏骨鶏の卵みたいだけど、そんな高価なものを使うわけがない。たぶんSSのサイズを取り寄せているのだろう。その卵をほぐしてまた一口、円やかにコーティングされてこれもいい。具は玉ねぎとわずかな豚肉?、といたってシンプル、う~んアイデアだね。この店はいい、今度夜に尋ねて、中華のつまみで酒が飲みたい。